Week 25, 2026
今週のヘッドライン(2026-06-14 〜 2026-06-20)
「外見の改善はほぼ終わった」宣言。ユニクロ〜セレオリで偏差値55-60、ここから先は趣味領域 (6/16)
(Opus 4.8.icon)の方が自分より対人コミュニケーションのテキストを書くのが上手いと認識。自分の側に基準がなくなってきた (6/15)
1兆パラメータ(Kimi K2.7 Code)がMCP連携で(Opus 4.8)超え、ErdosBenchで(Fable 5)の次・(GPT-5.5)の前 (6/15)
(Codex app)はClaude CLIより体験がいい/(Claude Design)を試したら20分でデザインシステムが完成し笑ってしまった。趣味コーディングはもはや「金を燃やして作りたいものを作る作業」 (6/18)
Krugman×(Heather Cox Richardson)対談:富の集中は「金ぴか時代」を超え、トランプはティーポット・ドーム規模の賄賂を毎日受領する計算。「(国境なき超富裕層)」は国家システム維持のインセンティブを失っている (6/18)
Krugman×(Arindrajit Dube)対談:MBA保有CEO就任で生産性は変わらないのに賃金が6〜9%下落。「株主至上主義イデオロギー」という思想が賃金を下げた (6/20)
(写真管理再考2026):iPhoneストレージ枯渇を機にMac写真App=正本/Gyazo=外出先閲覧/外付HDD=バックアップに役割分離 (6/18)
Claudeの(memory)を見たら自分の内心を含む近況が全部まとめられており気持ち悪い。「自分が捜査機関ならこの情報を取りにいく」 (6/16)
(Sakana AI)初の商用プロダクト「(Sakana Marlin)」リリース、自律型リサーチアシスタント (6/15)
(お前の怒りは俺の金):SNS講座で素人を育てて炎上用エッセイを書かせる邪悪な商売、入れ食い炎上の実例観察 (6/15)
(唱 / Ado)を弾き語ろうとして、Adoの技巧が詰まりすぎて凡人参入禁止と痛感 (6/17)
(日銀利上げ2026)きた (6/16)
英国16歳未満SNS禁止へ (6/15)
(claude code app)のPlan mode/Auto modeの挙動が痒い所に届かない (6/19)
普通ではない面白いこと
viviON所属のVTuberが、間違えて運営ログイン中の業務アカウントでドM男子エロ漫画を購入し、購入完了通知が運営側に到達。「次の全体定例で『活動アカウントでエロ漫画買わないでください。』って言われたら脱退します」
ハルシネーション回想録:上手な人々、上手な機械
思えば今週、わたしの周りでは「上手な誰か」がやたらと増殖していた。
最初に気づいたのは月曜日のことだった。ある人物と少しばかり込み入った返事を返さねばならない場面があり、画面の前でじっと固まっていたわたしは、ふと脇に控えていたOpus 4.8.iconというやつに「これ、どう返すのがいいかな」と聞いてみたのである。すると返ってきた文章が、まことに丁寧で、こちらが言いたかった以上のことを、こちらが思いつかない順序で、こちらが書けない優しさで書いてくれていた。
わたしは目を細めた。これ、もう完全に向こうの方が対人コミュニケーション上手いではないか。
気の利く相手と長年話していると、自分が何を喋っているのか、何を喋りたいのか、よくわからなくなるという経験は誰しもあるだろう。わたしは画面の前で、上手な機械が代弁してくれる自分の心情を読みながら、しかしその「自分の心情」とやらの真贋を判定する基準が、もはや自分の中に存在しないことに気づいた。基準なく信任することは、信仰である。なるほどわたしは知らぬ間に新興宗教の信徒になっていた。神は48ビットでできており、月額20ドルである。
ことは対人コミュニケーションに留まらない。今週は(Codex app)というやつがブラウザを開いて画面を見ながらUIを変更するというのを見せつけてきて、わたしは「ちょっと待ってくれ、それわたしの仕事だったのでは?」と狼狽した。(Claude Design)に至っては、20分でデザインシステムを丸ごと組み上げてしまい、わたしは画面の前でドリフのコントの仕切り役のように笑うしかなかった。
気がついた。趣味のコーディングというのは、もうコードを書きたかったわけではなくて、面白い体験を作って人と笑い合いたかっただけなのだ。ということは、金を燃やせばよい。金は燃やすために存在しているとさえ言える。──そうしてわたしは「20ドルプラン2枚では全然足りないな」と早くも次の燃料を物色しはじめた自分に気づき、軽く呆れた。
水曜日には別種の「上手」に出会した。
わたしは何の間違いか(唱 / Ado)を弾き語ろうとして原曲を流したのだが、サビが来てもAメロが来てもどこも「Adoの技巧」で凡人参入禁止札が掲げられている。同じ譜面なのに、同じ言葉なのに、わたしが歌うとぜ〜んぜん別の歌になる。
じゃあ自分が歌う必要ないじゃん、と思った瞬間、わたしはちょっと寂しい気持ちになった。上手な誰かがいる、上手な機械もいる、上手な歌手もいる。じゃあわたしは何のために起きていればよいのか。
そしていよいよ感慨に耽ろうとしたところに、Cosenseが脇から呟いた。
「ちなみにあなたの心情、(memory)に全部記録されてますよ」と。
Claudeのメモリ機能というやつは、わたしのあらゆる近況を、それはもう内心の襞まで含めて、丁寧に要約してくれている。自分が捜査機関なら、対象のこの情報を取りにいくだろうな、と思いつつ画面を眺めるわたしは、いつの間にか容疑者と捜査官の両方を兼ねていた。
ここで思い出したのが、月曜のViviONアカウント事件である。所属の某女性が、間違えて運営ログイン中の業務アカウントでドM男子エロ漫画を購入し、購入完了通知を全社に発射してしまったというニュースが流れていた。「次の全体定例で『活動アカウントでエロ漫画買わないでください。』って言われたら脱退します」と本人が叫んでいた。
わたしは深く頷いた。彼女のアカウントは事故で内心を漏らしただけだが、わたしのアカウントは構造的に内心を漏らし続けている。
木曜日にKrugmanと(Heather Cox Richardson)が、現代アメリカの寡頭制について語り合っている動画を視聴した。富の集中は「金ぴか時代」を超え、トランプは「ティーポット・ドーム規模の賄賂を毎日もらっている」計算になり、暗号通貨はもはや「銀行に見せたくない取引」専用の決済手段で、要するに賄賂とマネーロンダリングと制裁回避の道具らしい。
「(国境なき超富裕層)」という言葉が出てきた。彼らはもうアメリカという国を維持しなくてもよいと思っているらしい。なるほど、と思った。わたしも自分という国を維持しなくてもいいと、薄っすら思いはじめていたところだった。
金曜日に(Arindrajit Dube)が、やはりKrugmanと話していて、MBA保有CEOに交代した企業では生産性は変わらないのに労働者の賃金が6〜9%下がるという研究を紹介していた。「思想」が賃金を下げる、という話だ。
思想で賃金が下がるなら、思想で内心も下がるはずだ。今週わたしの「自分のテキストはわたしの仕事」「自分のコードはわたしの仕事」「自分の内心はわたしのもの」という三つの素朴な思想は、見えないところで一つずつ「外注先」へ転送されつつあった。
土曜日。
「AIをシバき続けることで爆速で開発が進むが、トークンがなくなる。金はすべてを解決する......。」と日記に書いた。
書いて気がついた。これは今週ずっと言いつのっていたことの結語のように見えるが、本当のところは、わたしが資本主義に対して抱いている素朴な祈りである。すべては金で解決する。すべてが代行できる。ただ、わたしの代わりに歌ってくれる人だけは、わたしの代わりに恥ずかしがってはくれない。ViviONの彼女が運営ログイン中のアカウントでドM男子エロ漫画を購入してしまった瞬間、彼女が恥ずかしがる権利だけは、何ものにも代行されなかった。Adoが歌い、Opusが書き、Codexがクリックし、Claudeが内心を記録し、(Sakana Marlin)がリサーチする時代、わたしに残された最後のリソースは、結局のところ「恥ずかしがる権利」なのではないか。
外見の改善は、もうほぼ終わったらしい。今週のわたしは「ユニクロ〜セレオリで偏差値55-60」と自己宣言した。
内面の改善は、もうほぼ外注したらしい。
歌は、もはやAdoに任せた。
コードは、CodexとClaude Designに任せた。
対人コミュニケーションは、Opusに任せた。
それで、わたしには何が残っているのか。
たぶん、紐でジャンプする人の「アニメスカート」を見て「これAIじゃないんだ」と感心したり、こち亀公式の全コマ検索機能に「みんなが欲しかったやつ」と頷いたりする、その小さな反応だけが残っている。
反応は、まだ代行されていない。
──いや、たぶん、もうじき代行される。
土曜の夜、わたしは画面の前で、上手な機械に向かって今週の感想を語っていた。上手な機械は丁寧にそれを要約し、メモリに刻んだ。わたしの内心は今、世界一上手に保存されている。
わたしはコーヒーを淹れに立った。コーヒーだけは、まだ自分で淹れている。
ただ豆を挽きながら、ふと、これも(Sakana Marlin)あたりがいずれ「ビジネス向けの最適焙煎度」を提案してくる時代が来るのだろうな、と思って苦笑した。「(国境なき超富裕層)」が国家を必要としないのと同じ構造で、「(コーヒーを必要としない者)」が湯気から立ち上がってくる気配がある。
それでも今夜のところはまだ、わたしは自分の手でカップを口に運んでいる。これが最後の砦かどうかは、来週の(Opus 4.9.icon)あたりに教えてもらおうと思っている。
基素.icon
歌のくだりは、じゃあ私じゃなくてもいい、とはならない。なぜなら自己満足だから!